株式会社ナガスイ
営業部主任
井手口 優さん
一夜干し、みそ漬け、炙り茶漬け。魚市場で水揚げされた新鮮な魚介類を加工した製品を手掛ける株式会社ナガスイ。大村市富の原に本社を構え、1969年の創業以来、職人たちの華麗な包丁さばきと素材をいかした味付けに定評があります。看板商品はなんといっても「エイヒレ」。長崎県産の貴重エイを1枚1枚手でさばき、天日干しすることでうま味をぎゅっと凝縮。軽く炙ればお酒のアテにもぴったりです。この自慢の逸品を、全国各地の百貨店で開催される物産展でPRするのが井手口さんの主なミッション。親しみやすい雰囲気と愛嬌たっぷりの笑顔で、全国にファンを増やしています。
転機が訪れたのは24歳のとき。出身地である大阪で水産関係の仕事に就き、かまぼこの製造を担当していた井手口さん。もともとナガスイの専務と知り合いだったこと、さらに転職を考えていたタイミングも重なり、大村に移住することを決めました。「福岡に親戚がおり、幼い頃から九州には親しみを感じていました。長崎にも旅行で遊びに来たことがあって、楽しい場所だなと」。そんな井手口さんが大村市にやってきたのは今から17年前のこと。「当時は畑ばかりで今とは雰囲気が全然違います。国道34号沿いや空港通りにお店がどんどん増えていき、町としての発展具合がすごい。暮らしていて不便さを感じませんね」と当時を振り返ります。
さらに2022年には西九州新幹線も開業。長崎空港、高速道路のIC、新幹線と高速交通の「三種の神器」がそろう全国的にも珍しい町に。東京、宮崎、鹿児島など全国の物産展へと出かけていく井手口さんにとって、交通アクセスの良さは大助かり。「移動時間が短縮できるのがいいですよね。大阪時代は片道1時間と通勤もかなり大変で。2時間あれば趣味を楽しんだり、いろいろできますよね。都会の渋滞は本当にムダだなと思います。その点、大村は渋滞が少ない!私にとってはそれだけでも移住してきてよかったなと痛感しています」。
2度目の転機が訪れたのは27歳のとき。北海道の百貨店で開催される物産展で運命の出会いが待ち受けていました。催事担当をしていた女性に心ひかれた井手口さん。「北海道に催事に出かけるのは年に一度だけ。はずかしがり屋の性格も手伝って、5年ほど思いを打ち明けることができず」。そんな2人を見かねた業者仲間のサポートもあり、年に一度の逢瀬が実を結びました。まるで織姫と彦星のように、なんともロマンチックなエピソードです。
大村(長崎)と北海道。日本列島を縦断する遠距離恋愛を経て8年前に結婚。これを機に、奥さまも北海道から大村へ移住し、念願のマイホームも建てました。「都会で戸建ての庭つきは到底ムリだけど、大村なら夢じゃない。都会から見たら田舎かもしれないけれど、町もにぎやかだし、自然もいっぱいだし。そのバランスがちょうどいい。17年住んできて、心からいいところだと思っています。あと食べ物もおいしい」。結婚して初めて大村にやって来たという奥さまと一緒に、クジラやカラスミなど、長崎ならではの食文化も楽しんでいるそうです。
大村に縁もゆかりもない2人が、ナガスイをきっかけに出会って、結ばれて。まるで長崎県産のジャガイモのペーストで長崎和牛をサンドした同社のもうひとつの名物「愛のコロッケ」みたいではありませんか。素朴で、やさしく、深みがあって。大村での穏やかな暮らしを満喫しながら、夫婦としての時間をゆっくり重ねていきます。